文:MATSUBARA Yoko
ゆうに200人を超える著者やライターの原稿をリライト・編集してきたライター兼編集者(筆者)が、本を自分で出版するときのポイントをお伝えしています。
今回は、本の原稿を書くときによくやってしまいがちな失敗として、「同じことを繰り返し書いてしまう」を取り上げてみます。
同じ文章を書いてしまうとは、1行〜数行、多いときは数ページに渡って、同じ内容のことを2度3度書いてしまうことです。
「数ページにもわたって、何回も、同じことを書く? すぐ気がつくでしょ! そんな失敗するわけない」
と思う方も多いかもしれませんが、なかなかどうして。筆者が出くわした中では頻度の高い失敗なんです。
でも、どうして失敗してしまうのか。
そして、この失敗をどのように防いでいけばいいのでしょうか。
書くときの思考に寄り添っていくと、明らかになっていきます。では、見ていきましょう!
目次
同じことを書いてしまう プロでも失敗しやすい理由とは
同じ文章を書いてしまうとは、例えば、
1章で「AさんとBさんの出会いの様子」が書かれているとします。
それが、別の章で「AさんとBさんの出会いの様子」が、もう一度似たような文章で、それも「前にも書いたけれど」などの補足もなく出てくるようなこと。
繰り返し出てくる同じ文章に出くわすと、気づかない読者もいるかもしれませんが、読者によっては「同じこと書いている」と心の中でツッコミを入れているかもしれません。
大きな不信感にはつながりにくいものの、「くどい」と思ったり、なんとなくモヤモヤしたりします。
書き手側としてはダブる内容はできるだけなくしておきたいところです
ところで、「何度も同じことを書いてしまう」人は、原稿を書き慣れていない人だけなのでしょうか?
そうとも言い切れません。プロのライターもやってしまいがちな失敗なんです。
かくいう筆者も、同じ語句の説明を何度か書いてしまうといった失敗などは、よくやらかしています。本の原稿を書いている途中で「あれ、これって前に同じことを書いたはずでは・・・」と思い出し、他の章の原稿を読み返して訂正する・・・というのはザラにあります。
なぜやってしまいがちなのか。
次のような理由が挙げられるでしょう。
1 原稿が多くて気づかない。
2 原稿を増やしたくて書いてしまう。
3 書きやすい内容なので、つい書いてしまう。
4 強調したくて書いてしまう。
5 どうしても同じことを書かなくてはならない。
6 ブログなどをまとめて本にするときに、見落とす。
一つひとつ、見ていきましょう。
理由その1 量が多くて気づかない
本の原稿は、文字量が多いです。紙の本では、3万字くらいから、多い本で6万文字くらいになることも。kindle本でも2万文字くらいは書きます。
ブログ記事を2000〜3000文字くらい書くとすれば、その10倍以上の量の原稿を書くわけです。
なので、単純に「ほかのところで書いていることを忘れて」同じことを書いてしまうのです。
特に、章が変わるときは要注意。
同じ章の中では、同じことを書く失敗は比較的少ないのですが、第1章で書いたことを、第4章で繰り返して書いてしまう、というように、
章が変わるとうっかり書いてしまうんですよね〜、これが。
理由その2 原稿を増やしたくて書いてしまう
本の原稿は書く分量も多く、それだけで大変。文章が思うように浮かんでこないことがあります。
「できるだけ多く書かなければ・・・」「書くことがない!」と焦せるあまりに、書きやすいことばかりを何度も書いてしまうことも。
でも、本の原稿量は多ければいい、というものではありません。
分量に見合った内容であってこそ、質の良い本になります。同じ内容で嵩(かさ)増ししても、良い本はできません。
理由その3 書きやすい内容なので、つい書いてしまう
話すときに、いつも言ってしまう口癖ってないでしょうか。決まった相槌を打ってしまうとか、同じジョークを言ってしまう、同じ自慢話をしてしまうとか。
書くときにも、同じ出だしで書いてしまう、同じ話題を挙げてしまうといった書き癖を持っていることがあります。その人にとっては、書きやすくてついつい書いてしまうのですが、読んでいる側からは「また同じことを・・・」と思われているかもしれません。
「理由その2」のように、書くことがなくて焦ってしまうときにも、この書き癖が出やすいので要注意。
理由その4 強調したくて書いてしまう
書き手にとっては、とても重要なこと。何度繰り返しても足りないくらい、読者にしっかりと伝えておきたい。そう思って、あえて同じことを何度も書く方もいます。
確かに、伝えたいことを強調するのは大切です。でも、同じことを繰り返し書けば、伝わりやすくなるとは限りません。
それどころか、読者の頭の中では「ここは、前にも同じことを書いていた・・・」という考えがぐるぐる巡り、肝心のメッセージが入ってこないことだってあります。
重要なメッセージを伝える書き方というものがあります。
「大切だから単に何度も書く」とならないように、注意したいですね。
理由その5 同じことを書かなければならない
そうはいっても、本の構成上、同じことを何度か本に登場させなければいけないという場合もあります。
だから同じことを書くのはやむを得ない・・・わけではありません!
そんな場合も、「理由その4」と同じように、重要なメッセージを何度も本に登場させるときの書き方をすれば、「単に同じ内容を書く」失敗は免れます。
理由その6 ブログなどをまとめて本にするとき、見落とす
書き溜めたブログなどを一冊の本にまとめるような原稿の作り方もあります。
いくつかの原稿をまとめるときに、重複している内容を削除し忘れることがあります。その結果、同じ本の中に、何度も同じ内容が出てきてしまうのです。
修正したつもりで見落としてしまう、うっかりミスです。
対策 同じことを書かないようにするには
「同じことを書いてしまう」を防ぐには、どうすればいいのでしょうか。
大まかに、次のような3つの対策が挙げられます。
1 事前に構成を立てる
2 書いた後に自分でチェックする
3 他の人にチェックしてもらう
対策1 事前に構成を立てる
「うっかり同じことを書く」を未然に防ぐには、書く前に構成を立てるのがとても有効です。
本の執筆では、いきなり原稿を書き始めるのではなく、構成を作ってから書き始めるようにするのです。
構成というのは本の骨子を本の流れに沿って書き出したもので、わかりやすくいえば目次のこと。
「本の第1章に、何と何と何が入る」などとあらかじめ決めて一覧にしておくと、重複している内容が一目でわかるというわけです。
構成では、なるべく細かく書く内容を書き出しておくと、防ぐ効果はアップします。
対策2 書いた後に自分でチェックする
書いた後に、原稿全体を読み直してチェックすることも大きなポイントです。
ただし、チェックしていて「同じ内容かな?」と感じるたびにほかのところの原稿を読み返していては、なかなかチェックが進みません。次のように上手に付箋機能やメモ機能を使っていくといいでしょう。
まずは全体をチェック 細かなチェックはその後で
原稿をチェックする際に、気づいた箇所にはとりあえず付箋やメモを付けて、先に先に読み進めるようにします。
読み通した後に、付箋やメモを貼ったところを吟味し、ほかのところを読み直したりして、内容が重複してるところを修正していきましょう。
原稿は、プリントアウトしたものに、付箋やメモをペタペタ貼っていってもいいでしょう。パソコンやスマホの画面で見るなら、検索機能を使って同じキーワードを探していくのが便利です。
書いている途中でも付箋を貼っておく
原稿を書いている途中でも、「同じことを書いているかも?」と思ったら、とりあえずメモを貼っておくのもいいです。
私は、気持ちの余裕があれば、その場で原稿の心当たりのあるところに戻って確認してから修正します。
ただ、書くことだけで手一杯であれば、「もしかして?」と少しでも感じたときにメモだけ残して、書き進めていくのがいいでしょう。書くペースが乱れて、作業が止まってしまうのはもったいないからです。
そして後でチェックしたときに、まとめて修正するようにします。
読者の一人になったつもりでチェック
自分でチェックするとき注意したいこと。それは、「自分の原稿」ではなく、「読者の一人」になったつもりで原稿を読むことです。
ちょうど自分の癖は自分ではわからないように、「自分の原稿」の間違いは読んでいても気づかないものです。
そこで、別人格になって本の粗探しをするくらいのつもりで原稿を読んでみてください。
とはいっても、原稿を書いた後すぐに読んでもなかなか「読者」にはなりきれないかもしれません。
そんなときは、原稿を書き上げて2〜3日くらい経ってから読むといいでしょう。だいぶ客観的に自分の原稿を見れるようになっていますよ。
対策3 他の人にチェックしてもらう
知人や家族に読者として読んでもらう
先に挙げたように、自分でチェックする方法は、見落としも多いです。
他の人に、原稿をチェックしてもらってもいいでしょう。
しかし、他人といっても、原稿をチェックするのに慣れているわけではないので、どうしても見落としはあると考えておいてください。
見落としを最小限にしたいのなら、次のようにプロの校正者や編集者に原稿のチェックを依頼するのがおすすめです。
プロに頼むときのチェックポイント
同じ文章を何度も書いていないか、などの原稿のチェックは、予算があればプロの校正者や編集者に依頼するのがベストだと思います。
同時に、誤字脱字、敬語の書き方などのチェックもしてくれるのもメリットです。
大きな問題がある文章が見つかったときに、指摘だけするのか、代わりの文章案を提示してくれるのかといった対応は、校正者や編集者ごとに違うかもしれません。
事前にどこまで対応してくれるのかなどを確認しておくといいです。
まとめ
本を書くときにわりとやってしまいがちな、「同じことを何回も書く」失敗。
気になってしまう読者もいるでしょうし、本の質の低下にもつながります。
書いているときはなかなか気づかないものです。
構成をなるべく詳しく立てて書く内容を事前にチェックしたり、書いた後も原稿全体を読んで確認することを忘れずに。
自分では気づきにくいので他の人に原稿を確認してもらうのもいいです。
ベストなおすすめは、本づくりのプロである校正者や編集者にチェックしてもらうことです。